当研究室で学位を取得し、現在名古屋大学で博士研究員を務めている後藤佑介さんが第一著者となり、
絶滅した巨大鳥類や巨大翼竜の飛翔能力について解析した結果をPNAS Nexusに公表しました。
私自身が、巨大翼竜に持続的飛翔は不可能であったと結論づける論文(Sato et al. 2009 PLoS ONE)を公表した時は、
某チャンネルをはじめ、ネット上で数々の批判を浴びました。
あれから10年以上の月日が過ぎました。別のアプローチで巨大翼竜のソアリング能力について詳細に解析したところ、
ケツアルコアトルスには、ダイナミックソアリングもサーマルソアリングも難しかったであろうという結論になりました。
Goto, Yoda, Weimerskirch, Sato. How did extinct giant birds and pterosaurs fly?
A comprehensive modeling approach to evaluate soaring performance.
PNAS Nexus 2022, 1, 1-16
以下はプレスリリース
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2022/05/post-254.html
https://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2022/20220512.html
その後論文の内容を紹介する朝日新聞の記事がYahooニュース経由で配信されました(5月16日)
そのニュースに対するコメントが200以上ありました。コメントがあったこと自体は嬉しいことです。
しかし、新聞記事の内容に基づくコメントばかりで、原著論文を読んだ上でのコメントはほとんど無さそうです。
例えば、「当時の大気組成や密度は現在のものとは違っていたであろうから、計算結果は翼竜には適用できない」、というコメントが数多く見られました。
私たちは過去の大気密度などについても文献を調べ、専門家の意見も聞いて色々調べました。
翼竜や巨大鳥類が生息した時代の大気組成や密度が現代と大きく異なっていたとする専門家は、私たちが調べた限りいませんでした。
その上で、原著論文の中では、仮に現代の1.2倍の大気密度であってもソアリングは難しかったであろうと考察しています。
原著論文を読んだ上でのコメントを心より待っております。